エポキシ樹脂を用いた高機能PC鋼材には、プレグラウトPC鋼材やECFストランド(内部充填型エポキシ樹脂被膜PC鋼より線)がある。その特徴です。

プレグラウトPC鋼材

 プレグラウトPC鋼材は、ポストテンションの内ケーブルとして使用される被覆PC鋼材であり、PC鋼材の外側に未硬化のエポキシ樹脂を塗布し、 さらにその外側をシースによって保護した、土木学会基準JSCE-E 145(案)に規定される高機能PC鋼材である。従来のセメントグラウトを用いた普通PC鋼材の内ケーブルに代わるものとして、 実績が増加している。

プレグラウトPC鋼材の主な機能と利点

  1. プレグラウトPC鋼材は、グラウト作業が必要ないため、施工の省力化や工期短縮が可能となる。
  2. PC鋼より線を用いたタイプは、連続的にシームレスに形成された高密度ポリエチレンシースとエポキシ樹脂により、高い防食性を有する。
  3. PC鋼棒を用いたタイプは、エポキシ樹脂と高密度ポリエチレンを用いた樹脂製シースを有するもの、エポキシ樹脂と鋼製シースを有するものがあり、それぞれ高い防食性を有する。
  4. 工場での行き届いた品質管理下で製造され、一般のPCグラウトに比べてグラウト充填の信頼性が高く、かつ製造時から輸送、保管、架設、共用に至るまでの全期間の防食が確保できる。
  5. 一定期間経過後にプレグラウト樹脂が硬化することで、コンクリートとPC鋼材が一体化するため、構造物の耐力、ひび割れ性状ともに向上する。 また、樹脂の硬化後は、重防食PC鋼材となるため、構造物の耐力性のさらなる向上が期待できる。
  6. 同サイズのPC鋼材とシースおよびグラウトを組み合わせた場合に比べて、最外径が小さくなるため、部材厚を減ずることが可能な場合がある。
  7. 防食材であるプレグラウト樹脂は、完全硬化前であっても、徐々に粘度が上昇して硬化に至るため長期経過後の防錆材の流出の可能性が低く、 また、材料分離等に伴う防錆性能の低下がない。
  8. 冬季グラウトができない環境においても、プレグラウトPC鋼材であれば通年施工が可能となる。
  9. 高密度ポリエチレンシースを使用したものについては、プレグラウト樹脂が未硬化の状態でも、最外周に十分な厚みの樹脂シースで被覆しているため、 高い防食性能が確保されている。

ECFストランド(内部充填型エポキシ樹脂被膜PC鋼より線)

 ECFストランドは、PC構造物において外ケーブルあるいはポストテンション,プレテンションの内ケーブル,もしくは斜ケーブルとして使用される被覆PC鋼より線であり エポキシ樹脂を用いてPC鋼より線の表面を被覆し、かつ各素線間の隙間部を充填した、土木学会基準JSCE-E 141(案)に規定される高機能PC鋼材である。(英語表記:Epoxy Coated and Filled Strand)

ECFストランドの主な機能と利点

  1. PC鋼より線の素線間に形成される微小な隙間にも樹脂が充填されているため、これを通じたグラウト時の余剰水や腐食促進因子の移動によるトラブルがなく、高い耐久性が期待できる。
  2. グラウト及び樹脂シースで多重防食システムを形成し、厳しい使用環境、例えば「道路橋示方書・同解説 Ⅲコンクリート橋編」に示される塩害対策S区分においてPC構造物の内ケーブルや斜ケーブルとして 使用する場合、エポキシ樹脂によって十分な防食性能が確保されているため、万が一グラウト充填状況が不十分であった場合でも、構造物の耐久性への影響を著しく減ずることができる。
  3. 外ケーブルとしてノングラウト形式で使用することができ、グラウト作業に伴う施工上の省力化、工期短縮、ケーブル重量の削減ができる。
  4. エポキシ樹脂被覆層が素線同士の相対移動を防ぐため、曲げ配置部でのフレッティング性能や定着部の疲労性能が向上する。
  5. 冬期グラウトができない環境においても、ノングラウト方式であれば通年施工が可能となる。
  6. 工場での行き届いた品質管理下で製造され、かつ製造時から輸送、保管、架設、共用に至るまでの全期間の防食が確保できる。
  7. PC鋼材に防錆処理がされているため、配置後すぐにグラウトするなど施工スケジュール上の制約が少ない。
  8. 被覆表面が平滑で桁内外ケーブルなどに用いる標準型、内ケーブルやプレテンション用にコンクリートとの付着性を向上させた付着型、紫外線直射や厳しい塩害地域向けにエポキシ樹脂被覆の外側にポリエチレン被覆(PE被覆)を押し出し成形したPE被覆型の3種類を使い分けることができる。

出典: コンクリートライブラリー133号 エポキシ樹脂を用いた高機能PC鋼材を使用するプレストレストコンクリ-ト設計施工指(案)

inserted by FC2 system